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PROJECT 03 : ガーナ共和国 輸血感染プロジェクト

“One TERUMO”で
アフリカの医療の未来をつくる。

輸血は、医療において基盤を支える治療法だ。しかし、新興国では、安全な輸血用血液の確保が困難な地域が数多くある。テルモグループは、アフリカのガーナ共和国を舞台に、JICAと官民連携のもと、輸血感染対策プロジェクトを展開した。輸血における感染リスクを低減する病原体低減化システムの導入を図るとともに、安全な輸血のための仕組みづくりを推進。それは困難な状況のなか、アフリカの医療に貢献するために、まさに“One TERUMO”といえるグローバルチームによるチャレンジだった。

MEMBER

血液・細胞テクノロジーカンパニー テルモBCT Blood Innovations
兼務 血液・細胞テクノロジーC 血液グループ マーケティングチーム
2002年入社|分子生物学系卒

プロジェクトでは日本における研修のコーディネートをはじめ、立ち上げからクロージングまで携わる。

血液・細胞テクノロジーカンパニー テルモBCT 品質・薬事部
1999年入社|心理学系卒

プロジェクトでリーダーを務める。2019年、日本に帰任して品質・薬事部に従事。

Terumo Blood and Cell Technologies, Government Affairs and Public Policy
2004年入社

テルモBCTにおいてビジネスにおける政府交渉などのグローバル責任者を務める。

Terumo Blood and Cell Technologies, Country Manager Middle Africa
2018年入社

テルモBCTにおいてアフリカ地域の販売部門の責任者を務める。ケニア駐在。

CHAPTER /

01

輸血感染リスクを低減する「病原体低減化システム」を導入し、
安全な輸血のための体制を構築。

プロジェクトの幕開けは2017年5月。ガーナ共和国の首都・アクラで、政府の要人や関係者を招き、100名を超える参加者とともにキックオフミーティングが盛大に催された。その会場で、M.Mさんは開式の直前まで役割分担の確認、プレゼンターとの最終チェック、マスコミの受入、要人との挨拶など準備に追われていた。

M.Mさんは、このイベントやその直後にスタートする活動のために、2週間ガーナに滞在していた。準備のため訪問した病院では、体温計や血圧計すらも他の病棟から借りないと患者のバイタルチェックができないという、ガーナの医療の切実な現状を見た。そんな中、貧血で入院していた妊婦が輸血によってみるみる回復する様子を見て、輸血療法の効果を目の当たりにし、今回の自分たちのプロジェクトの重要性を改めて認識した。

「ガーナでは、HIVやマラリアなど輸血時の感染症リスクが大きな医療課題となっています。この輸血感染リスクを低減するテルモBCTの「病原体低減化システム」の導入を通じて、安全な輸血のための体制を構築するのが今回のプロジェクトの目的でした」。

プロジェクトには、テルモBCTを中心に親会社のテルモを含めた5カ国7組織からメンバーが集結した。そのチームのリーダーがM.Mさんだ。2年間にわたるプロジェクトの期間に、計17名のメンバーが国、地域を跨いで活動した。

CHAPTER /

02

ガーナの医師たちの熱い想いに触れ、
プロジェクトをぜひ成功させたいと願った。

現地で安全な輸血体制を実現・維持していくためには、それを担うシステムである「病原体低減化システム」を導入するだけでは完結しない。輸血ばかりでなく、その後の副作用なども監視する体制(ヘモビジランス)も重要だ。そのための人材の育成も不可欠となる。プロジェクトでは、現地での活動だけでなく、ガーナの医師および看護師計7名を日本に招聘し、トレーニングと啓発活動を行った。この日本での研修のコーディネートを担ったのがC.Mさんである。プロジェクトの立ち上げからクロージングまでを日本で支えた中核の一人だ。

「この研修の企画立案には、ガーナの輸血医療全体に貢献するというプロジェクトのビジョンが欠かせませんでした。ビジョンを共有することで、社内だけでなく、日本を代表する血液事業機関、医療機関の協力を得ることができ、そのお陰で質の高い研修を組むことができました」。ガーナからの医療従事者にとって特に印象深かったことは、約60年前の日本も現在のガーナと同じように、輸血感染症克服の途上だったという点であった。「日本にも安全な輸血医療のために課題を一つ一つ克服してきた歴史があることを知り、ガーナの医師たち全員が、自国でも実現させたいと熱く語りました。それを聞き、ぜひプロジェクトを成功させ、ガーナの医療に貢献したいと強く思いました」。

CHAPTER /

03

世界から集まったメンバーたちの意志が
やがて一つに集束しプロジェクトは進んでいった。

ガーナでのキックオフミーティングにM.Mさんとともに参加していたテルモBCTのN.Tさんも、プロジェクトの中核を担ったキーパーソンだ。グローバルでの政府交渉の責任者である彼は、ガーナ政府や保健省大臣、現地の医療機関との交渉を担当した。多くの政府要人と接点をもつ彼がいたから、ガーナ政府はじめ主要機関の支援を得ることができたと言える。

「今回のプロジェクトは、我々にとって非常に難しいものでした。期間や人員などの制約、アフリカという地域における経験の少なさという困難を乗り越え、プロジェクトを完遂させることができました。このプロジェクトの成果が、現在のテルモBCTのアフリカ戦略の礎となっています」。

彼の言葉にあるように、このプロジェクトがガーナをはじめアフリカにおける輸血事業の発展において、大きな一歩となったことは間違いないだろう。同じくテルモBCTにおいてアフリカ地域の販売責任者としてプロジェクトに携わったE.Mさんは次のように語る。

「ガーナのプロジェクトによる貢献は、アフリカにおいてテルモが安全な輸血医療に貢献する布石となりました。その後、ウガンダとナイジェリア、タンザニアで「病原体低減化システム」の購入が決定。他の国々との交渉も始まっており、ビジネスは着実に広がっています」。

これらの国々において「病原体低減化システム」は、COVID-19の治療のために回復者から採取した血漿製剤や、小児がん治療のための血小板製剤にも使用され、さまざまな疾病への輸血療法の安全性を高めることが期待されている。

CHAPTER /

04

私たちがガーナで蒔いた種が
アフリカ大陸で大きく実を結ぼうとしている。

ちょうどプロジェクトの最中に入社したE.Mさんは、プロジェクトをこう振り返る。

「私にとってこのプロジェクトはテルモグループのメンバーとして初めて経験したチャレンジでもあったため、強く印象に残っています。手探り状況な中、それでも国や組織を超えてさまざまなメンバーがアフリカの輸血医療への貢献に真剣に取り組んでくれた。テルモグループの素晴らしさを実感した経験でした」。

その言葉を受けて、N.Tさんは次のように話す。

「メンバーが支えあい、それぞれの持ち場で力を発揮することで、テルモグループとして一つの目標に向かって前進することができた。プロジェクトを通じて、M.Mさんさんをはじめプロジェクトメンバーとの生涯の友情を築くことができたことがとても嬉しかったです」。

彼らが抱いている想いは、M.MさんやC.Mさんにとっても同じだろう。ガーナにおける官民連携での輸血感染対策プロジェクト自体は2018年10月にクロージングを迎えた。メンバーたちは現在、それぞれの国や組織で新たなチャレンジに取り組んでいる。M.Mさんは改めて次のようにプロジェクトを振り返る。

「今回、久しぶりにプロジェクトを支えたメンバーと話をして、あの頃のいろいろなシーンや想いが次々と蘇ってきました。苦労も多かったですが、あの時みんなで蒔いた種がアフリカ大陸で大きく実を結んでいます。テルモグループにとっても、自分たちにとっても、これほど嬉しいことはありません」。

テルモBCTは、アフリカを今後の注力地域として位置づけている。ガーナでのこの一歩が脈々とアフリカ大陸へと広がり、さらに世界の安全な輸血医療への貢献に発展していく。

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